「改装前と同じ雰囲気を残したい」
老舗という「襷」をつなぐ平成の大改装。

吉宗の代名詞ともいえる「御一人前」と呼ばれる、茶碗むしと蒸寿しのセット。 長崎人にとっては、ちゃんぽんや皿うどんに負けず劣らず馴染みのあるメニューです。 慶応二年(一八六六年)創業という長い歴史をもつ長崎の老舗・吉宗。 昭和二年比建てられた店舗は、昭和五七年の長崎大水害は耐えたものの老朽化が進み 今回の大規模改修工事を実施することとなりました。

有限会社吉宗の取締役営業次長で、改修工事の責任者でもある吉田さんによると、今回の工事において最も重視したのは「お客様の目に触れる部分は、できる限り改装前と同じ雰囲気を残す」ことでした。 新しいものに造り替えるのではなく、いうなれば「時計の針を巻き戻す」ような工事。目指したのは昭和初期に建てられた同店のイメージでした。

工事をどこに任せるか。江戸の時代から続く老舗という「襷(たすき)」を受けた者としては、今だけでなく、その先の未来へ向けての責任もあります。「テレビCMで、谷川建設が木造に強いというイメージは持っていましたが、決める前に一度、 社長に会って話しをしてみたいと思いました。」という吉田さん。実際に会って、想いを伝え、想いを聞くうちに、「この人は信用できる」と感じて、谷川建設による工事が決まりました。
昭和初期の建物で、図面も写真すらも残っていない耐震改修工事。人の記憶やイマジネーションに頼った部分も少なくありません。常連さんや親類の話しを聞きながら、 約8年前には存在していたという中庭も、今回の改修工事で見事に復活することとなりました。
「元に戻った。」それが、完成した店舗を見た吉田さんの第一印象でした。ご自身が子供だった頃のお店のイメージを取り戻そうと奮闘した今回の工事。ひと一人が歩くだけで揺れていた箇所が揺れなくなったのが一番の驚きだったといいます。雨が降るとバケツをもって右往左往していた頃も今は昔。「お客様にも喜んでいただけたし、自分自身もホッとしています。」営業再開を待ち望んでいたお客様が続々と戻ってきて いるのを実感する毎日だそうで、常連さんは新しくなった店舗で居心地の良い自分なりの指定席を探そうとしている時期なのだとか。平成の世で新たな命を吹き込まれた老舗の名店はいま、新たな歴史を刻み始めています。

Before After

Before
After
Before
After
Before
After