新築の予定がリフォームへ
退職を機に田舎暮らしをしようと、土地を探していたM様。チラシで見つけた古家付きの土地を見に、現地を訪れました。「木がうっそうと茂り、ジャングルのよう」でしたが、意外にも庭はきれいで、眺めも良かったため、購入を決意されました。
当初、建物は取り壊して家を建てる予定でしたが、M様が天井裏に隠れていた梁を見つけたことから事態は急展開。「これを壊すのはもったいない、なんとか保存できないか」と考えるようになりました。さらに、購入した土地が市街化調整区域で、役場から「新しく建てることはできません。」と言われたため、梁と柱を残して「リフォーム」することに決めました。
施工業者の選定が難航
リフォームを決めたものの、施工業者の選定が難航。大手住宅会社や古民家再生の実績がある工務店にも打診しましたが、M様の希望を叶える住宅会社はありませんでした。
そんな中、「古民家再生の経験はありませんが、総力をあげてやります。」と、手を挙げたのが谷川建設でした。「いろんな部署から人が来て様々な方法を検討してくれるなど、谷川さんには本当によくしてもらいました。」というM様。何人もの大工さんから「壊すのはもったいない。是非この家は残してください。」と言われたことを、心強い後押しとなりました。
木の声に耳を傾けて
これまで培ってきた技術や知識を総動員してM様邸のリフォームがスタート。基礎を打つにも、一旦解体して組み直すか、ジャッキアップするか、曳家にするか、様々な方法が検討されましたが、最終的に柱を乗せている石ごとコンクリートで固める方法を選択。構造の歪みを矯正するために1ヶ月かけて消防ホースのようなもので引っ張るなど、躯体にストレスを与えない方法で工事は進みました。木の声に耳を傾けるように進める作業は、実に手間と時間の掛かる仕事ですが、少しずつ時間を巻き戻すように、建物の骨格はあるべき姿へと戻されていきました。
現代に生きる住まいへ
船舶の管理に携わっていたM様は、船の修理を通じて培った木材の知識に加え、DIYもこなします。「リビングの造りつけの棚は私が修理しました。簡単そうに見えますが、平らにするためのノウハウが必要なんですよ。」と楽しそうに語ってくれたM様。
130年前の手仕事の跡が残るこの住まいと、その価値を見出し、現代に生きる住まいとして再生したM様。出会うべくして出会った人と建物、そして何より、奥様のご理解なくしては、この家のリフォームは完成しなかったに違いありません。